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歯を失う人が多い県・少ない県――同じ日本で3倍の差がつく理由
40歳以上で自分の歯が19本以下になっている人の割合は、都道府県によって3倍以上の差があります。歯を失う原因は、歯みがきの熱心さだけでは説明できません。この記事では全国のデータを紹介したうえで、新潟県に暮らす方にこそ知っておいていただきたい「大人になってからの分かれ道」についてお話しします。
3倍の格差――永久歯を失いやすい県、失いにくい県
まず、明るいデータからお伝えします。日本人の歯の本数は、この40年間で大きく改善しました。
70代後半で20本以上ある人は、9.4%から61.6%へ
厚生労働省の歯科疾患実態調査によると、70代後半で20本以上の自分の歯を持つ人の割合は、1987年に9.4%でした。それが2024年には61.6%まで増えています。約6.6倍です。
60代後半でも、26.8%から82.7%へと増加しました。「80歳で20本以上の歯を残そう」という8020運動の達成者は、2005年に2割を超え、2024年には6割を超えています。
入れ歯が当たり前だった時代から、自分の歯で噛み続けられる時代へ。予防歯科の普及と、一人ひとりのケアの積み重ねが生んだ成果です。
それでも、県によって3倍以上の差がある
ただし、全員が同じように歯を守れているわけではありません。同じ日本で、同じ医療制度のもとで暮らしていても、歯を失う人の割合には地域によって大きな差があります。
統計データ分析家の本川裕氏が2026年9月、都道府県別のデータを公開し話題になりました。指標は「40歳以上で自分の歯が19歯以下の人の割合」です。数字の高い順に並べると、次のようになります。
| 順位 | 都道府県 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 岩手県 | 39.4% |
| 2位 | 青森県 | 33.5% |
| 3位 | 長崎県 | 32.2% |
| 4位 | 秋田県 | 29.6% |
| 5位 | 北海道 | 29.3% |
反対に、割合が低い県は次のとおりです。
| 順位 | 都道府県 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 香川県 | 12.4% |
| 2位 | 大阪府 | 13.8% |
| 3位 | 東京都 | 14.8% |
| 4位 | 広島県 | 15.2% |
| 5位 | 静岡県 | 16.3% |
出典:本川裕「永久歯の”喪失率”ワースト3位は長崎、2位は青森、では1位は…」PRESIDENT Online(2026年9月11日)。厚生労働省「歯科疾患実態調査」をもとに性・年齢調整を行ったもの。
岩手県の39.4%と香川県の12.4%。その差は3倍以上です。40歳以上の方が10人集まったとき、片方では約4人、もう片方では約1人が19本以下という計算になります。
地図に表れる傾向
新潟県は、上位5県にも下位5県にも入っていません。全体の傾向としては、北日本と九州・沖縄などで高く、本州の中央部や大都市を抱える地域で低くなっています。
気候や食文化、生活習慣の違いが背景にあると考えられます。
歯を失う原因は、歯みがきの差ではない
「歯を失う原因は、結局は歯みがきの差ではないか」と思われるかもしれません。しかし、都道府県の差を説明する要因として挙げられているのは、別のものです。
喫煙・飲酒・塩分、そして歯周病
本川氏が挙げているのは、お酒やたばこの習慣です。これらが多い地域では、歯科検診を受ける人の割合も低い傾向があると指摘しています。
たばこは歯ぐきの血流を悪くし、歯周病を進行させやすくします。歯周病は日本人が歯を失う原因の上位にあたります。また、塩分の多い食習慣は高血圧や糖尿病といった生活習慣病につながり、糖尿病は歯周病を重症化させることが知られています。
つまり歯を失う原因は、口の中だけで完結していません。暮らし方全体が関係しています。
いちばん効いているのは「歯科検診を受けるかどうか」
そのうえで、もっとも実行しやすく、差が出やすいのが歯科検診です。
痛くなってから受診すると、すでに治療が必要な状態になっています。定期的に診てもらっていれば、歯周病も、むし歯も、後述する食いしばりによる傷みも、小さいうちに見つけられます。この積み重ねが、20年後・30年後の歯の本数を分けていきます。
新潟の逆説――こどもは全国一、大人になると
ここからは、新潟県に暮らす方に知っておいていただきたいデータです。
12歳で「むし歯0.23本」という到達点
新潟県の12歳児の一人平均むし歯数は0.23本。全国でもっとも少ない数字です(令和5年度)。市町村別に見ると0.03本から0.65本まで幅があります。
出典:新潟県「新潟県歯科保健医療計画(第6次)概要版」。データは新潟県「歯科疾患実態調査(小児)」による。
新潟県は昭和56年に県の歯科保健計画を策定し、40年以上にわたって県ぐるみでむし歯予防に取り組んできました。早い時期から学校でのフッ化物洗口に取り組み、平成20年には全国で初めて「歯科保健推進条例」を制定しています。
新潟で育ったお子さんの歯が丈夫なのは、偶然ではありません。地域ぐるみの予防が40年続いた結果です。
20代の「33.3%」が示すもの
ところが、大人のデータは少し様子が違います。
過去1年間に歯科健診を受けた新潟県民の割合は、次のとおりです(令和5年・県民健康・栄養実態調査)。
| 年代 | 受診した人の割合 |
|---|---|
| 20〜29歳 | 33.3% |
| 30〜39歳 | 44.9% |
| 40〜49歳 | 49.6% |
| 50〜59歳 | 48.8% |
| 60〜69歳 | 57.7% |
| 70歳以上 | 52.2% |
| 総数 | 50.7% |
出典:新潟県「令和5年 県民健康・栄養実態調査」(新潟県歯科保健医療計画(第6次)概要版に掲載)
もっとも低いのが20代の33.3%です。3人に1人しか受けていません。そして年齢が上がるにつれて、少しずつ増えていきます。
80歳で20本以上の歯を持つ人の割合は48.4%です。新潟県の計画では、この数字を全国の51.6%と並べて示しています。
ただし、新潟県の値は令和5年の県民健康・栄養実態調査、全国の値は令和4年の歯科疾患実態調査によるものです。この記事の冒頭で紹介した「2024年に6割超」は令和6年の調査によるものです。いずれも調査年や調査主体が異なるため、数字を横に並べて優劣を論じられるものではありません。
新潟県自身も、第6次の歯科保健医療計画のなかで「こどものころの望ましい口腔衛生習慣が成人期以降定着していない」ことを課題として挙げています。さらに「成人期の取組は個人の努力にゆだねられている状況」であり、「結果として高齢期に歯が失われてしまうことが課題」と明記しています。
学校を卒業すると、フッ化物洗口も、学校の歯科健診も自動的にはついてきません。守られていた予防が、自分で選ぶものに変わる。そこが分かれ道になっています。
診察室で見ている「これから失う人」のサイン
当院では25年にわたり、矯正を含めて多くの患者さんの口の中を診てきました。実際の診察で「この方はこれから歯を失うかもしれない」と感じるのは、必ずしも大きなむし歯がある方ではありません。
むし歯でも歯周病でもない、第三の道
むし歯と歯周病が二大要因であることは、よく知られています。しかし診察室では、もう一つの道をよく目にします。食いしばりです。
食いしばりは、特別な人だけの癖ではありません。0歳のお子さんから、入れ歯を使っている100歳の方まで、程度の差はあれ誰もが行っています。ぎりぎりと音が鳴るものを歯ぎしり、音を立てずにぐっと噛みしめるものを食いしばりと呼びます。
問題は力の強さです。エラが張っている方、あごの筋肉が厚い方は、それだけ強い力がかかります。
この仕組みを、当院ではこう説明しています。歯の表面のエナメル質は、地震のときの建物の外壁のようなものです。揺さぶられると少しずつ崩れていきます。唾液やフッ素によって修復(再石灰化)されますが、震度5の壁と震度12の壁では、修復にかかる時間がまったく違います。筋力の強い方は、毎晩「震度12」を自分の歯に与えているようなものです。
削れた部分は歯と歯ぐきの境目に現れます。これを楔状欠損(くさびじょうけっそん)といいます。治療したことのない歯がしみる場合、むし歯ではなくこちらを疑います。むし歯は、治療歴のある歯から再発することが多いためです。
なお、酸性の飲食物によって歯が溶ける酸蝕症も、よく似た見た目になります。レモン水やクエン酸飲料を毎日飲む習慣のある方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
参考記事:レモン水で歯が溶ける:歯科医師が見た酸蝕症の「意外な犯人」
痛みが消えた=治った、ではない
もう一つ、診察室でよくお伝えしていることがあります。
しみていた歯が、あるときから何も感じなくなることがあります。多くの方は「治った」と受け取ります。しかし実際には、歯の神経が死んでしまって感じなくなっているだけ、というケースがあります。
この場合、しばらくしてから歯ぐきが腫れ、根の治療が必要になります。進行すれば抜歯に至ることもあります。つまり「痛みが消えたから大丈夫」と判断して受診しないことが、歯を失う原因になりうるということです。
さらに、削れた部分を詰めて終わりにしても、食いしばりという原因が残っていれば再発します。原因に向き合わなければ、根本的な解決にはなりません。
朝、あごが疲れていませんか
ご自身で気づけるサインもあります。
- 朝起きたとき、あごがだるい・疲れている
- 歯の先端が平らにすり減っている
- 歯と歯ぐきの境目がくぼんでいる、しみる
- 頬の内側や舌に歯の痕がついている
こうした状態が続いている場合は、一度ご相談ください。食いしばりに対しては、就寝時に使うマウスピース(ナイトガード)という方法があります。口に合ったマウスピースを使うと、噛みしめても筋肉に強い力が入りません。先ほどのたとえで言えば、震度12を震度1に近づけるイメージです。
上越市の歯科健診は20歳から、500円で受けられます
「特に困っていないけれど、しばらく行っていない」という方にお伝えしたいのが、上越市の歯科健康診査です。
20歳・30歳・40歳・45歳・50歳・55歳・60歳・65歳・70歳が対象で、後期高齢者医療制度の被保険者は76歳・80歳も対象です。妊婦の方とそのパートナーも受けられます。自己負担は500円で、70歳・76歳・80歳の方は無料です。
対象年齢であれば、受診券が手元になくても受診できます。歯科医療機関に予約の電話を入れ、「上越市の歯科健診として受診したい」と伝えてください。実施しているのは上越市・妙高市・糸魚川市内の108の歯科医療機関です。
出典:上越市「歯科健康診査」(令和8年度)
20代の受診率が33.3%というデータを紹介しました。裏を返せば、この制度は20歳から使えるということです。学校の歯科健診が終わったあとの空白を埋める仕組みが、すでに用意されています。
まとめ:歯を失う原因は、暮らしの中にある
歯を失う原因を整理すると、次のようになります。
- むし歯と歯周病に加えて、食いしばりによる力のダメージがある
- 喫煙・飲酒・食生活といった生活習慣が、歯周病を通じて歯の寿命に影響する
- 痛みが消えたことを「治った」と判断すると、かえって進行することがある
- そして、定期的に診てもらっているかどうかが、長期的にもっとも大きな差になる
新潟県は、こどものむし歯予防で全国一の成果を上げてきた県です。その予防を大人になっても続けられるかどうかが、これからの分かれ道になります。
新潟県は予防の合言葉として「3つのF」を掲げています。Dental Floss(歯間の清掃)、Fluorides(フッ化物の利用)、Follow UP(かかりつけ歯科医による定期健診)です。
当院では、矯正・一般歯科の両方の視点から、患者さん一人ひとりの状態に合わせたご提案をしています。治療が必要ない場合は、その旨を正直にお伝えします。気になる症状がある方も、「しばらく行っていないだけ」という方も、お気軽にご相談ください。
参照元
- 本川裕「永久歯の”喪失率”ワースト3位は長崎、2位は青森、では1位は…「歯抜け」率が高い都道府県の共通点」PRESIDENT Online(2026年9月11日)
https://president.jp/articles/-/118833 - 厚生労働省「歯科疾患実態調査」(政府統計の総合窓口 e-Stat)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?toukei=00450131 - 新潟県「新潟県歯科保健医療計画(第6次)」(計画期間:令和7年度〜令和14年度)
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kenko/0351718.html
(概要版 PDF:https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/444831.pdf) - 新潟県「令和5年 県民健康・栄養実態調査」(上記計画概要版に掲載。本文で並記した全国値は令和4年「歯科疾患実態調査」によるもので、調査年・調査主体が異なります)
- 上越市「歯科健康診査」
https://www.city.joetsu.niigata.jp/soshiki/kenkou/shika-kenshin.html
本記事のデータは2026年9月時点で公開されている資料にもとづいています。制度の内容は変更される場合がありますので、健診の詳細は上越市の案内をご確認ください。
上越市の歯医者・矯正歯科
新潟県上越市下門前1805
電話番号:025-520-4180
診療時間:
平日 9:00~12:30/14:00~18:00
土曜 9:00~12:30/14:00~17:30
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※祝日のある週は木曜診療